-Draft- 暫定公開 -Draft-

 2/18/2009

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キワモノの中のキワモノ

世の中には「広く知れ渡っているけれども実は殆ど存在しない」という奇妙な物体が結構存在します。 例えば44オートマグの「クリント・ワン」。 ダーティーハリーの映画で使われマルシン工業からモデルガンとガスガンが販売されましたが、これはイーストウッド氏への贈答用に作られたたった一丁のみのカスタム銃で他に存在しません。 また同じマルシンだと「ゲーリング・ルガー」や「ワイアット・アープのS&W モデル3」もそうですね。

そう言った完全な一品物でなくとも「御賜ベビーナンブ」や「日野式拳銃」の様に数個体が確認されているだけで実際には幾つ製造されたかすら不明の物、また「リベレーター」の様に大量に生産されたけど殆ど残っていない物など、現存数不明の「有名な銃」って結構ありますよね。

そこで持って来たのが Mateba MTR-8、ただでも製造数が少なくキワモノ認定されているイタリアはマテバ社の逸品です。 同社のオートリボルバー (Unica 6)や攻殻機動隊のトグサの銃(モデルは 2006M らしい)をググっていると出て来るのでご存知の方も多いのではないでしょうか。 ちなみに32口径12連発のMTR-12や22口径14連発のMTR-14と言うモデルも存在した模様です。


Mateba MTR-8

 

マテバ社

正式な会社名は Macchine Termo Balistiche と言うらしく、モデルによってはロゴもMA-TE-BAと3つに分かれています。 wikipediaによると2005年に潰れてしまっているようですが、米国では未だに新品が代理店によって販売されていますのでどうなんでしょうか?

 ・CLOSE-BBH (22LR / 25ACP / 32ACP / 380ACP / 9mm x 18mm) --- 80年代
 ・MTR-8 (38 Spl) --- 80年代
 ・2006 (38 Spl) --- 90年代
 ・MT1 Target Pistol (22LR) --- 2009年現在、新品で入手可能
 ・UNICA 6 Auto Revolver (357 Mag / 44 Mag / 454 Casul) --- 2009年現在、新品で入手可能

同社によって開発された拳銃は判明しているだけで上記の5種類になりますが、それらの正確な製造年度や仕様、また製造数を示す資料は(少なくとも英語圏には)無く、詳細はかなり謎に包まれています。

   
右側面 / 左側面

 

海外に学ぶ

さてそんなマテバのそんなMTRですが、ヨーロッパの実銃オークション記録の中に僅かながら資料の断片がありました。 まず製造年ですが、84年としている所が一箇所ありました。 他の殆どが80年代としか記していない中、これは重要な情報です。

また1984年発行のフランスの鉄砲雑誌 Cibles の175号にMTR-8の記事が4ページ載っており、新製品が紙面を飾るタイミングとしても信憑性が高いです。 早速古本をフランスより取り寄せたのですが当然フランス語のみなので全く意味が分かりません。 ただ今OCR → 半自動翻訳の真っ最中です。

   
cibles No. 175 (1984) / 内は全部フランス語

   
見開き含めて4ページ

製造数は500としている所が一箇所、600としている所が一箇所、それと量産されたのか不明とする所が一箇所。 まぁここに現物がある訳ですから例え極少量であれ量産はされたと見なすのが正しいでしょう。 また実際の製造現場、特に手作業がかなりの工程を占める鉄砲造りの場合、きっちりとした数で製造が終わる筈は無いので5〜600丁と言う大雑把な数の方が現実味があります。 ちなみに今回入手できた固体は200番台の初めでした。


内部構造が良く分かる図面と一緒に

 

各部詳細

現時点では殆どデータがないので、取り敢えずこれまで余り公開されていないアングルからの写真を載せて誤魔化しましょう。 webを漁ると出て来る画像の殆どはシリアル 000037 を左側面から撮った物で、出元は2004年のドイツのオークションの様です。


通常メンテ用の分解

まずはクリーニング等で必要になる最低限度の通常分解(ネジ2本)から。 所詮リボルバーなのでここまでは他機種と大差ありません。

   
前方からの眺め / 後方からの眺め

バレルは3インチの2重構造、と言うかフロント・サイト兼リブを装着する為に段付き加工が為されています。 初期(プロトタイプ?)のMTRでリブ無しバレル&メイン・フレーム上部先端にフロント・サイトと言う仕様の写真を見た事がありますが、サイトの軸線長を長く取る為に改良されたのでしょう。 ただ後付けのバレル・シュラウドとリブは他と材質が違うようで、加工、仕上げ共に出来はイマイチです。

   
フレーム上部、リア・サイト〜フロント・サイトへ

ちなみにメイン・フレームはプレスのU字鋼です。 同じマテバでも手の込んだ加工と美しい仕上げで60年代のS&WやColtを髣髴させるUnica 6(オートリボルバー)に比べるとかなりの落差があります。 きっと当時はそこまで加工にお金を掛けられなかったのでしょう。

 

小物

以下はMTR専用のクリップ(スピード・ローダーの様な物)です。 鋼板プレスの凝った造りで8発一気に装填・排莢出来るスグレモノなのですが、これが無いと撃てない(=銃として機能しない)と言う少し困った反面もあります。

   
クリップ(装填時)

3ピース(もしかしたらピンも別部品で4ピース?)構造で、特にヒンジの部分とラッチの部分の操作には気を使います。

   
クリップ(非装填時)

S&WやColt用のクリップなら純正・汎用どちらも簡単に手に入りますが、流石にこれは純正品以外存在しないでしょう。 一応代理店を通して在庫の確認を依頼していますが、追加分は恐らく自分で作る羽目になりそうです。

   
装填用に開いた状態

使用感

今回は射撃場に行く時間がなかったのでスナップキャップを入れて空撃ちした感想ですが、見た目の予想通り、と言うかそれ以上にフロント・ヘビーでした。 38口径も8発集まれば結構な重さになりますし、それが通常より遥か前方に偏って配置されているんだから当然と言えば当然でしょうか。 まぁ、その、何と言うか... はっきり言ってバランス悪いです。(爆

DAトリガーの感じは想像していた程悪くはなく、見た目よりマトモでした。 明らかに幾つかの部品を介している感覚と引きの重さは複雑怪奇なリンクの構造に由来するものでしょうが、動き自体にはそこそこの切れがあり、ミロクのリバティ・チーフをDAで撃つよりはマシと感じました。 (あの油の切れたColtのようなヌメ〜っとした重さは正直辛いですよね...) 

あ、でも競技専用に開発された銃のトリガー・フィールをそのレベルと比較できるって言う時点で駄目なのかな?(爆


トリガー周りのリンク

ちなみに申し訳程度に付いているSA機構(マニュアル・コック用のレバー)は本当に「申し訳程度」でしかありませんでした。 きっとメンテナンスの時しか使う事は無いでしょう。 だって構造がコレ↓ですもん。


SA用のマニュアル・コック・レバー(左右両側に有り)

左右それぞれにあるレバーはグリップ・パネルの内側で押さえられているだけなのでグリップを外すと↓の様に「びよよ〜ん」と外れ落ちます。 ちなみに左右のレバーは独立していて連動ではありません。

   
何も考えずにグリップを外すとこうなります

 

結び

やっぱりマテバでした。 見た目通りで買い手の期待(と不安)を絶対に裏切らない性能と仕様、絶対に万人向けなんかには成り下がらない孤高の志は正にイタリアン。 実戦や競技に使えるかどうかではなく、好きか嫌いかで物事を決められる漢向けの銃ですね。 だから「おめぇのマテバなんかには期待してねぇよ」とか言われるのかも知れませんが...

そんな訳で毎度おなじみの結論ですが、この手の銃は見つけたら買え。 後先考えずに買え。 無理してでも買え。 後悔は買ってからでも出来る。

さてお後が宜しい様で...

 

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